トンネル工事には様々な工法がありますが、ここでは代表的な4つの工法について解説します。シールド工法、NATM(ナトム)工法、開削工法、潜函工法は、それぞれ異なる特徴を持ち、現場の状況に応じて選択されます。
シールド工法
シールド工法は、円筒形の掘削機(シールドマシン)を使用して地中を掘り進む工法です。
特徴
- 地下水や軟弱地盤でも安定した施工が可能です。
- 地上への影響が少なく、都市部での施工に適しています。
メリット
- 地表面への影響が少ない:地上の建物や道路への影響を最小限に抑えられます。
- 安全性が高い:密閉された空間で作業するため、作業員の安全性が確保されやすいです。
デメリット
- 高コスト:専用の機械が必要で、初期投資が大きくなります。
- 曲線施工の制限:急カーブの施工が難しいです。
施工時の注意点
- 地盤条件の事前調査が重要です。
- シールドマシンの選定と管理が施工の成否を左右します。
NATM(ナトム)工法
NATM工法は、地山の持つ支保能力を利用してトンネルを掘削する工法です。
特徴
- 地山の変形を許容しながら掘削を進めます。
- 吹付けコンクリートとロックボルトを主な支保材として使用します。
メリット
- コスト効率が良い:地山の支持力を利用するため、支保工を最小限に抑えられます1。
- 柔軟な断面形状:様々な形状のトンネルに対応できます。
デメリット
- 地質条件の影響を受けやすい:軟弱地盤では施工が困難な場合があります。
- 技術者の経験と判断が重要:地山状況の観察と適切な対応が必要です。
施工時の注意点
- 切羽(掘削面)の観察と計測管理が重要です。
- 地山の挙動に応じて、適切な補助工法を選択する必要があります。
開削工法
開削工法は、地表から直接掘削してトンネルを構築する工法です。
特徴
- 地表から掘り下げて構造物を構築し、その後埋め戻します。
- 駅舎など大規模な地下構造物の建設に適しています2。
メリット
- 大規模な空間の構築が可能:地下駅などの広い空間を作れます。
- 施工が比較的単純:特殊な機械を必要としません。
デメリット
- 地上への影響が大きい:工事期間中、地上の利用が制限されます。
- 地下水位が高い場合、施工が困難になります。
施工時の注意点
- 周辺地盤の安定性確保が重要です。
- 地下水の処理や周辺建物への影響に注意が必要です。
潜函工法
潜函工法は、地上で製作したコンクリート製の函(はこ)を沈めながらトンネルを構築する工法です。
特徴
- 主に河川や海底のトンネル建設に用いられます。
- 函を沈めながら掘削と構築を同時に行います。
メリット
- 水中でのトンネル建設が可能:河川や海底での施工に適しています。
- 高い水密性:水圧に強い構造を作ることができます。
デメリット
- 施工に時間がかかる:函の製作と沈設に時間を要します。
- 高度な技術が必要:精密な管理と高度な技術力が求められます。
施工時の注意点
- 函の沈設時の精度管理が重要です。
- 水圧や浮力の管理に細心の注意が必要です。
これらの工法は、それぞれ特有の特徴を持っています。シールド工法は都市部での施工に適し、NATM工法は山岳部での経済的な施工が可能です。開削工法は大規模な地下空間の構築に適しており、潜函工法は水中でのトンネル建設に使用されます。現場の条件や要求性能に応じて、最適な工法を選択することが重要です。施工時には、各工法の特性を理解し、適切な管理と注意を払うことで、安全で効果的なトンネル工事を実現することができます。
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