「せん断応力」について、分かりやすく解説!

 せん断応力とは、材料の内部で平行な面がずれるように作用する力によって生じる応力のことです。これは橋や建物の梁(はり)、ボルトやリベットの接合部など、さまざまな構造物の強度を決定する重要な要素です。

 例えば、はさみで紙を切るとき、刃の間で紙がずれながら切れます。このとき紙にはせん断応力が働いています。せん断応力が材料の強度を超えると、破壊や変形が起こるため、安全な設計のためには正確な計算と評価が必要です。ここでは、せん断応力の基本的な概念、計算方法などについて説明します。

1. せん断応力の定義

 せん断応力(τ)は、せん断力(V)をその断面積(A)で割った値として求められます。

 τ=V/A

 この式から、せん断力が大きいほど、また断面積が小さいほどせん断応力は大きくなることが分かります。

2. せん断応力の単位

 せん断応力の単位は、国際単位系(SI)では「パスカル(Pa)」ですが、実際の構造計算では「ニュートン毎平方ミリメートル(N/mm²)」がよく使われます。

3. せん断応力の種類

せん断応力には以下の種類があります。

  1. 単純せん断応力:一つの方向だけにずれる力(せん断力)が加わる時に生じる応力。
    • ハサミで紙を切る時、刃と刃の間で紙が受ける力
    • ボルトやリベットで金属板を接合した時、それらの接合部分に加わる力
  2. 複合せん断応力:異なる方向から同時に複数のせん断力が加わる時に生じる応力。
    • 回転する軸に加わる力
    • 複雑な形状の部品に様々な方向から力が加わる場合
  3. 横せん断応力:梁(はり)のような長い部材に垂直な力が加わった時に生じる内部の応力。
    • 部材の断面内で力の大きさが変化します(中央部が最大)
    • 部材のたわみや変形に関係します
    • 構造物の設計で重要な要素となります

4. せん断応力の計算方法

4.1. 単純せん断の計算

 例えば、ボルト接合部において、ボルトの断面積が 100 mm²、せん断力が 10,000 N である場合、せん断応力τは次のように計算できます。

 τ=V/A=10,000/100=100N/mm²

4.2. 梁におけるせん断応力の分布

 梁では、せん断応力は断面全体で均一ではなく、断面の中央付近で最大になります。せん断応力分布は次の式で表されます。

τ=VQ/Ib

  • V:せん断力(N)
  • Q:中立軸上の静的モーメント(mm³)
  • I:断面二次モーメント(mm⁴)
  • b:せん断応力が作用する位置の幅(mm)

せん断応力が断面の中央付近で最大となる理由

せん断応力が断面の中央付近で最も大きくなるのは、以下の理由からです。

1. せん断応力の分布の特徴

 せん断応力は、断面全体に均等に広がるわけではなく、放物線のような形で分布します。つまり、断面の上や下の端ではゼロになり、中央に向かうほど大きくなるのです。

2. 形による影響(断面二次モーメントの影響)

 材料の「形」や「太さ」などの影響を考えたとき、中央部分はせん断応力がかかりやすいという性質を持っています。特に、真ん中のあたりではせん断力が逃げ場をなくし、溜まりやすくなるため、せん断応力が最大になります。

3. 材料の変形しやすさ

 物を押したり引いたりしたとき、端の部分(上や下)はほとんど動かず、中央部分が最も変形しやすいという特徴があります。たとえば、消しゴムを机の上に置いて、端を持って押したとき、中央部分が最もずれやすいことがわかるでしょう。せん断応力もこれと同じで、中央で最大になるのです。

4. 力のバランス

 物体に力が加わると、その力が全体で釣り合うように分布します。せん断応力も同じで、上と下でゼロになる代わりに、中央部分で最大になることで全体のバランスを取っているのです。

5. 建物や橋の設計にも活かされている

 この性質を活かして、H形鋼(エイチの形をした鉄骨)などの建築材料では、中央部分に「ウェブ(腹板)」と呼ばれる板を入れ、せん断力に耐えられるようにしています。これによって、建物や橋がしっかりと支えられるようになります。

5. せん断応力と降伏強度の関係

 材料の強度評価には、「降伏強度」や「破壊強度」との比較が重要です。ここで、降伏強度とは、材料が塑性変形(元の形に戻らない変形)を始める時の強度、破壊強度は、材料が完全に破壊されるときの強度を指します。

 多くの金属材料では、降伏強度(引張応力)をσyとすると、せん断降伏強度(τy)は次のように求められ、これはフォン・ミーゼスの降伏条件に基づいています。

 τy=0.577σy

 例えば、ある鋼材の降伏強度が300 MPaだとすると、その材料のせん断降伏強度は約173 MPa(300 × 0.577)と推定できます。

6. せん断応力の応用例

せん断応力は、以下のような構造物や機械部品において重要な役割を果たします。

  • ボルトやリベットの設計:接合部のせん断破壊を防ぐための計算が必要。
  • 梁の設計:梁のせん断強度を考慮し、断面形状を決定。
  • トラス構造:せん断応力と軸力の組み合わせによる設計。
  • 歯車の設計:歯面のせん断応力による摩耗や破損の防止。

 せん断応力を適切に設定し考慮することは、構造物や機械部品の安全性、効率性、耐久性、経済性を確保する上で極めて重要な役割を果たしています。

 

 せん断応力は、材料がずれ動く力に対抗する内部応力の一種であり、建築や機械設計において重要な指標です。せん断応力が大きすぎると、材料の破壊や変形や接合部の破壊などの危険性が増す一方で、小さすぎても接合部が滑りやすくなり固定力が弱まるといったことが生じてしまいます。せん断応力の理解を深め、せん断応力の分布や降伏強度との関係を理解することで、より安全で効率的な設計が可能になります。

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