「鉄骨」について、分かりやすく解説!

 土木工事において、「鉄骨(てっこつ)」は橋や高架道路、建物の骨組みとして欠かせない材料です。見た目は単なる鉄の部材に見えるかもしれませんが、実はさまざまな種類や工法があり、安全性や耐久性を支える重要な役割を担っています。ここでは、鉄骨の基礎知識や種類、使われ方、加工方法、そしてメリット・デメリットについて解説します。

鉄骨とは

 鉄骨とは、鉄を加工して作られた建設用の構造部材のことです。大きなビルや橋などの「骨組み」となって重さを支え、地面まで力(重さ)を伝える役割を持っています。非常に高い強度耐久性が求められ、コンクリートとは違い、軽量で扱いやすく、施工期間の短縮にもつながるため、土木工事でも幅広く利用されています。

 鉄骨構造の建物は、さまざまな部材が組み合わさることで高い強度と安定性を実現しており、それぞれの部材には重要な役割があります。

  •                                                       
    建物全体の重さ(屋根や床、人や物の重さなど)を支え、その力を基礎を通じて地面に伝える重要な部材です。柱があることで、建物の重さを分散して安全に地面まで伝えることができ、倒壊を防ぐ役割を果たします。鉄骨の柱には、H型や角型などさまざまな断面形状があり、建物の高さや用途、受ける力の大きさに応じて最適なものが選ばれます。
  • 梁(大梁・小梁)                                                   
    大梁は、各階の床や屋根の重さを柱に伝えるための太くて長い部材です。建物の骨組みの中で、柱と柱をつなぐ「背骨」のような役割を持ち、床や屋根がたわんだり落ちたりしないようにしっかり支えます。小梁は、大梁に比べて細く、床や屋根の重さを大梁に伝える役割を持っています。大梁と小梁が組み合わさることで、床や屋根全体をバランスよく支えることができ、建物の安定性が高まります。
  • ブレース                                                     
    ブレースは、斜めに配置される補強材です。地震や強風などで横から力(水平力)が加わると、建物は変形しやすくなりますが、ブレースがあることで力が斜め方向に分散され、建物全体が「ひし形」に変形するのを防ぎます。これにより、建物の「揺れにくさ(剛性)」が高まり、地震や強風にも強い構造になります。ブレースは、建物の変形を抑えて安全性を高めるために欠かせない部材です。

鉄骨の主な種類

鉄骨にはいくつかの種類があり、目的に応じて使い分けられています。

H形鋼(エイチけいこう)

 横から見ると「H」の形をしている鉄骨です。上と下の太い部分(フランジ)は、曲げる力や圧縮・引張りの力に強く抵抗します。大きな力がかかったとき、フランジがその力を受け持ち、部材の端で伸びたり縮んだりして全体を支えます。真ん中の板(ウェブ)は、フランジ同士をつなぎ、せん断力(部材を上下にずらそうとする力)に耐えたり、全体の形を保つ役割を果たします。

 フランジとウェブがそれぞれの役割を分担することで、H形鋼は曲げやつぶれにとても強く、効率よく材料を使えるため、ビルや橋の柱や梁によく使われます。

角形鋼管(かくけいこうかん)

 断面が四角や長方形になっているパイプです。箱のように全体が閉じている「閉断面」構造なので、外からねじる力や曲げる力が加わったとき、断面全体でバランスよく力を受け止めることができます。そのため、ねじれや曲げにとても強いのが特長です。

 また、四角い形は見た目もきれいで、柱や梁、手すり、門などデザインを重視する建物でもよく使われます。閉じた断面なので、どの方向から力がかかっても安定して強さを発揮できるのも大きなメリットです。

円形鋼管(えんけいこうかん)

 円形鋼管は断面が丸いパイプ状になっており、この形によって「断面性能」(部材の形や大きさによって決まる、外からの力に対する強さの指標)が全方向で均等になります。これは、円の形が360度どこから見ても同じで、断面の中心から外側までの距離(半径)がすべて等しいためです。そのため、どの方向から力が加わっても、部材全体でバランスよく力を受け止めることができ、特定の方向だけが弱くなることがありません。

 特に、つぶれる力(圧縮力)やねじれる力(ねじりモーメント)に対して強いのが特徴ですが、これは円形断面が力を全体に分散しやすく、変形しにくい構造だからです。例えば、四角い断面だと角の部分に力が集中しやすいですが、丸い断面ではそうした弱点がなく、どこから押されても同じように耐えることができます。

 このため、円形鋼管は看板の柱や橋脚、塔など、いろいろな方向から力がかかる場面で特に有利に使われています。

鉄骨のメリットとデメリット

◎ メリット:

  • 耐震性が高い:鉄骨は強度が高く、地震の揺れが来ても「しなる(曲がる)」ことでエネルギーを吸収し、建物全体が倒壊しにくくなります。これは、鉄の素材自体が粘り強く、急激な力に対しても壊れずに形を変えて耐える性質があるためです。日本のように地震が多い地域では特に大きな利点です。
  • 施工が早い:鉄骨部材は工場であらかじめ正確に作られ、現場では主に組み立てるだけなので、天候などの影響を受けにくく、工事の期間が短縮できます。また、工場生産による品質の安定も得られます。
  • リサイクル性:鉄は再利用が容易な素材です。解体した後も溶かして新しい鉄骨や他の製品に生まれ変わることができるため、資源を無駄にせず、環境にもやさしい建材です。

△ デメリット:

  • コストが高め:鉄骨は材料自体が高価で、加工や溶接などの手間もかかります。また、重量があるため、頑丈な基礎(土台)の上で組み立てる必要があり、その分コストが上がります。
  • 火に弱い:鉄は燃えにくいイメージがありますが、高温になると強度が急激に低下します。火災時には鉄骨が柔らかくなり、建物が倒壊するリスクがあるため、耐火被覆(特殊なコーティングやカバー)などの対策が必要です。

 鉄骨は、土木工事において重要な構造材であり、橋やトンネル、建物の支柱や梁など、さまざまな場所で使われています。鉄骨にはH形鋼や鋼管などの種類があり、溶接やボルト接合、防錆処理といった技術によって、安全で長持ちする構造を作り出しています。耐震性・強度・施工スピードといったメリットがある一方、コストや耐火性といった課題もあるため、設計段階で慎重な判断が必要です。鉄骨のしくみや使い方を知ることで、私たちの暮らしを支えるインフラの奥深さが少し見えてくるのではないでしょうか。

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